「沙羅の木だより」その29


令和元年10月2日


 10月に入り、令和元年度も後半を迎えたことになるのですが、大阪ではここしばらく日中の気温が30度を超え、真夏に逆戻りした感じです。例年であれば、爽秋の到来とともにカッターシャツも長袖に切り替える時期ですが、今年はまだまだ半袖で十分です。わが家においても、エアコンを再稼働しました。


 とは言っても季節は秋。巷には秋の気配を感じさせるものがいろいろ見受けられます。例えば、御堂筋名物のイチョウ並木では、早くも熟した銀杏が落下し独特の臭気を漂わせています。私を含め、あの臭いが苦手という人が大半だと思いますが、逆に、秋を実感させてくれる良い香りとして、私がいちばんに挙げたいのは『キンモクセイ』です。


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 キンモクセイは、ちょうど今ごろが開花時期であちらこちらで香りはじめています。秋になると優しく甘い香りを放つキンモクセイは、昭和の時代、消臭のため(汲み取り式)トイレの近くによく植えられていました。そこで、キンモクセイの香りがすると、反射的にトイレをイメージする年配者が多くいるのですが、私もまさにその一人です。私が4年過ごした大学の学生寮は、もともとは旧陸軍の兵舎として使われていた、築50年の木造平屋建ての年代物で、消防署から『危険家屋』に指定され、火事になると「カップラーメンが出来あがるまでに燃え尽きる」と言い伝えられ、近所の子どもたちからは『お化け屋敷』と呼ばれていました。そんなオンボロ寮でしたが、寮費が月500円で寮食堂での一食が90円と格安で、ひと月3万円あれば生活できたので、貧乏学生にとっては魅力的で何より有難かったのです。そのオンボロ寮のトイレが旧式で(別棟に水洗式もありました)、秋のこの時期に用を足していると、小窓の向こうからキンモクセイの甘い香りが漂ってきて、臭気や男の世界の煩わしさなど、すべてを忘れさせてくれる安寧のひとときでした。卒寮してはや30余年、懐かしのオンボロ寮はその後なくなってしまいましたが、今でも、街角でキンモクセイの香りがすると。遠い昔の青春時代を思い浮かべています。


 さて、今週は中学2年生が東京方面へ『秋期集団生活(オータムスクール)』に出かけています。9月30日(月)朝、のぞみ号に乗って東京駅まで行き、国会議事堂と東京タワーをめぐりました。二日目は、国立科学博物館と東京大学を見学し、午後からは東京ディズニーランドで友だちとの思い出づくりに励みました。最終日の今日は、NHKスタジオパークと浅草寺をまわり、夕方には東京みやげ(ミッキー?ドナルド?)をいっぱい携えて帰阪する予定です。お世話になった築地本願寺では、全員が大広間に布団を敷いて2泊しましたが、こんな経験はひょっとすると最初で最後かもしれません。まくら投げはしていませんよね。天気にも恵まれて、楽しく充実した3日間になったと思います。また、おみやげ話を聞かせてください。(詳しくは行事報告をご覧ください)